こんにちは、画像診断医かずです。
今回は、灘校という環境を振り返りながら、「東大に行くべきか、それとも医学部に行くべきか」という永遠のテーマについて書いていこうと思います。
最近何かと世間を騒がせている「高学歴がみんな医者になるのはどうなのか問題」ですが、実は私も高校時代にどちらに進むべきか悩みました。
結果として医学部を選び、現在は放射線科の画像診断医として働いているわけですが、当時の選択が今の自分にどう影響しているのか、医師になった今だからこそ見える景色を本音で綴ってみます。
現在、まさに進路に迷っている受験生や、その親御さんの参考になれば幸いです。
それではさっそく見ていきましょう。
なぜ東大を考えていたか
みんな進むから東大を考えていたが、やりたいことは漠然としていた!
高校時代の私が大学受験を意識して、最初に目指していたのは、やはり東京大学(東大)でした。
理由は至極単純で、「周りに行く先輩や友達がとにかく多く、将来の進路として一番イメージしやすかったから」です。
ご存知の方も多いかもしれませんが、灘という学校は学年の上位半分であれば東大に行けると言われており、従って部活の先輩も、席が隣の友人も、みんなとりあえず東大を目指していました。
そんな環境に身を置いていると、「自分もとりあえず東大に行くのが自然な流れなのかな」と、一種の同調圧力というか、とりあえずの正規ルートのように感じていたのです。
また、当時の私は生物と化学が得意科目で、なんとなく「この得意分野を活かせる道に進みたい」とも考えていました。
そこでぼんやりと思い描いていたのが、「生命工学(バイオテクノロジー)」の道です。
最先端の科学で人間の身体や生命の謎を解き明かす……そんな響きに、高校生ながらにロマンを感じていたわけです。
しかし、今振り返ると当時の私のリサーチ不足というか、解像度の低さは凄まじいものでした。
「生命工学を学んで、将来具体的に何ができるのか」「どういう職業に就き、どんな毎日を送るのか」ということについては、本当に何一つ、全然知らなかったのです。
しかも恐ろしいことに、それを自分で詳しく調べようとも思っていませんでした。

「まあ、東大に行ってから考えればいいか」くらいに、未来の選択を先延ばしにしていたのが本音です。
でも、親にはやはり将来設計のなさを見透かされていたのでしょう。
なぜ医学部を選んだのか
理由はやはり親の後押し!
前々から推されてはいたのですが、高3になり、医学部への進路変更を猛プッシュされたのです。
そして、そこで自分の進路を変えようと思ったのが、下の言葉でした。
「もし将来的に研究の道に進みたいと思ったとしても、医師免許を持っていれば、医師として働きながら研究だってできる。まずは医師免許という確固たるベースを持っておいた方が、人生の選択肢の幅が広がるんじゃないか」
この言葉は、当時の私の心に深く刺さりました。「なるほど、まあそれもそうだな」と、2週間程度悩んで進路の変更を決断しました。
親友の存在も大きかったですね。一番の友達が医学部を目指していたので、「別の大学を目指す」という心理的ハードルもほとんどありませんでした。

周りの人が優秀というのは、それだけで大きな価値につながります。
他にも、前にも書きましたが、灘高には土曜日に外部の講師(卒業生が多い)を招いて行われる「土曜講座」というユニークな授業があり、私はそこで医療系の講座をいくつか受講していたのですが
実はその時に「カテーテル治療(IVR)」に関する話に、なんとなく興味を覚えており、将来できればいいなと思っていた、というのもあったりします。

振り返ってみると、私が放射線科に進んだのは半ば必然だったのかもしれませんね。ちなみに土曜講座の記事は↓です。

まあ、そんなこんなで医学部に進み、実際に医師として働いているわけですが、その選択を振り返ってみてどうだったか書いてみましょう。
医師になり振り返ってみると
僕自身は医学部に進んでよかった!
さて、実際に医学部を卒業し、国家試験をパスして医師として働き始めた今、あの時の選択をどう評価しているか。
結論から言えば、「僕は医学部を選んでよかった」と思っています。
その理由ですが、周りの東大に行った友達を見ていて「将来設計が甘いと、東大では思ったことはできないのだろうな」と感じるからです。
理系の話ですが、東大に入った彼らは、みな一様に優秀であり、だいたい大学院に進んで何かしらの研究室に属することになります。
しかし、自分が本当にやりたい研究テーマを突き詰め、それで食べていけているのは、全体のほんの一握りというシビアな現実を後から知りました。
多くの人は、自分の本意とは少し離れたテーマの研究に従事せざるを得なかったり、厳しいポスト争いや予算獲得の壁に直面したりしています。

日本で研究者として生きていくというのは本当に大変なのです。
で、色んな人が「研究者として生き残るのはあまりにも狭き門だ」と見切りをつけ、民間企業の就職活動に切り替えるのですが、ここでも「やりたいことを仕事にできる」というのは珍しい。

本当にやりたいことができている人は、大半が高校から「~を専門にしたいと思っている」という明確な意思を持っている、というのが僕の印象です。
高校時代にぼんやり考えていた「純粋な研究者への道」は、想像以上に過酷なサバイバルレースでした。
一方で、医学部という仕組みはどうでしょうか。
少しマクロな視点で評価するならば、「国家のシステムとしては、非常に問題が大きい仕組み」だとも感じます。
日本トップクラスの優秀な頭脳が、毎年医学部という一つの箱に集められ、全員が「臨床医」という均一な医療労働力として社会に埋め込まれていく。
これはイノベーションや国力の多様性という意味では、歪な構造と言えるでしょう。
しかし、「個人としての生存戦略」というミクロな視点に切り替えると、これほど完成されたシステムはありません。
大学を卒業すれば、まるでベルトコンベアに載せられたかのように流れるように皆が臨床医になり、初期研修を終え、病院で働くことができる。
私自身、決して「何が何でも世界を変える研究をしてやる!」というような、燃えたぎるような強い意志や圧倒的なパッションを持っているタイプではありません。どちらかと言えば、環境に流されやすい凡人です。
そんな自分にとって、レールに乗っていれば自動的に食いっぱぐれのないプロフェッショナルになれる医学部の仕組みは、非常に向いていたのだろうと痛感しています。
どんな人東大に行くべきか
やりたいことが明確であれば行くべき!
ここまで、私自身の話を書いてきましたが、東大に向いている人はどのような人かについて、個人的な意見を書いていこうと思います。
もしあなたが、高校生の段階で、
- 具体的にこの大学のこの研究室に入って、この教授の下でこの研究がやりたい!
- 将来は財務省や外務省の官僚になって、国の政策を動かしたい!
- 行きたい会社があり、どうしても東大という箔をつけておきたい!
といった、明確で具体的な志望や野望を持っているのであれば、間違いなく東大に入ることを強くお勧めします。
東大には、それを叶えるための圧倒的なリソース、人脈、そしてチャンスが転がっており、目的意識がはっきりしている人には絶対にマッチするでしょう。

僕の同期でも、東大→官僚や国家の研究職みたいな人は何人もいますし、みんな楽しそうです。
あるいは、どんな環境でも適応できるという自信があるのであれば、東大でやりたいことを見つけるという選択もありかもしれません。
逆に言えば、医学部にはあくまで「臨床医を育成するための専門学校である」と割り切って入った方がいいです。
「最先端の生命科学を学びたい」とか「大学で人生の幅を広げたい」みたいな気持ちで医学部に入ると、高校みたいなカリキュラムと試験の数々に直面し、ギャップに苦しむことになります。
でも、今はやる気と体力があれば何でもできる時代なので、別に「医学部に入ったから選択肢が狭まる」なんてことはないです。

実際に、大学時代に独学でプログラミングやディープラーニングを学び、医療AIのベンチャーを立ち上げたり、コンサルなどビジネスの世界へ飛び出したりする「尖った面白い人」は一定数存在します。
まとめると、「明確に東大でやりたいことがある」という状態なら東大、「明確にやりたいことが決まっていない。でも、医学部に行けるだけの十分な成績がある」という状態なのであれば、医学部を選べばいいと思います。
AI時代を見据えて
補足としてこれからのAI時代を見据えた戦略も書いておきましょう。
これからの時代、医師はやはり強い職業であり続けると思っています。
というのも、 昨今色々な職業がAIに奪われると言われていますが、我々医師の仕事には「医療行為の責任を取る」という法的・倫理的な砦があります。
その議論の決着が付くほどにAIが進化しない限り、医師という職業は残り続けるでしょうし、逆に医師が消えるときには既に、人類はAIに支配されているでしょう。

さらに言えば、手技はAIにはまだまだできないので、AI時代を見据えると技術を持つ医師というのは一種の最適解と言えるかもしれません。
まとめ
- 東大は「東大でやりたいことが明確な人」もしくは「適応能力がとても高くどんな環境でもやれる人」が進むべき!
- 医学部は「やりたいことが漠然としている人」が行けばいい!
- AI時代を見据えると医学部は魅力的!
いかがでしょうか。
医学部は「やりたいことが漠然としている人」が行けばいいと書きましたが、もちろん「医師を志す人」が行くのが理想ではあります。
ただ、高校時代なりたいものが定まらないなんて人が多いのもやはり事実であり、僕自身医学部で学んで医師を志すようになったので、僕みたいな人に呼び掛けるという意味も込めてこの表現としました。
高校時代の進路選択は、想像以上に将来に大きな影響を及ぼします。ぜひ悔いのない選択をしてください。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。


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